しゃべれども しゃべれども
    2007年 06月 22日
【ユナイテッドシネマ キャナルシティ13】

しゃべれども、しゃべれども、なかなか客に噺を聞いてもらえない若手落語家を主人公に、彼のもとに集まった同じく「話し方」に悩む者たちとの交流を通して、人間としても噺家としても成長を遂げていく姿を描いた作品。不器用な人間たちが互いにぶつかり合い、もたつきながらも成長していく..というオーソドックスな筋書きながら、手堅い演出や役者の好演が光るハートウォーミングな作品に仕上がっている。落語界が舞台..というと、それだけで観客を選ぶ映画という気がするが、登場するのがみな現代的なキャラクターだということもあり、作品全体の印象はなかなか新鮮だ。

役者では、1ヶ月のトレーニングでここまでの話芸をマスターした国分太一もさすがだが、無愛想で口下手な美女に扮した香里奈が一番の印象だった。喜怒哀楽をあまり表情に出せない(というか、見た目は常に怒の状態)役柄ながら、シーンに応じて微妙な感情の違いを見事に表現している。反対に世間では絶賛を集めている子役の方はどうも..ああいう芸達者な子役の芝居は苦手だ。あと驚いたのが、国分が密かに憧れる女性に扮した占部房子。名前に憶えがあると思ったら、例のイラクでの邦人人質事件をモデルにした『バッシング』でヒロイン役を演っていた人だ。あれだけ、とことん暗いヒロインというのも珍しかったが、今作ではとても同一人物とは思えない。

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しゃべれども しゃべれども_b0004063_262262.jpg

# by coolkoro | 2007-06-22 22:40 | 劇場鑑賞
サイドカーに犬
    2007年 06月 20日
【NTT夢天神ホール】 ※試写会

根岸吉太郎監督の前作『雪に願うこと』を世評ほど良いと思わなかった私だったが、この『サイドカーに犬』は予告編でなぜか心引かれるものを感じて、いそいそと試写会に出かけた。
上映前の舞台挨拶では、根岸監督と主演の竹内結子、それに主題曲を唄っているYUIの3人が登壇。YUIはかってこの天神で路上ライブを演っていたそうだが、壇上の彼女は、自分に話が向けられているとき以外、直立不動の姿勢でじっとしているのが可笑しかった。根岸監督は彼女の生真面目そうな風情から、「映画に登場する小学生だった薫の10年後の姿」を連想したそうだ。なるほど、よくわかる。
一方の竹内結子はといえば、映画で演じたヨーコばりのユニークなトークが楽しかった。意外に今回の役は、これまででいちばん素の彼女に近いのかもしれない。

映画は、ある内気な少女、薫が自由奔放で型破りな女性と出逢い、共に過ごした夏休みの出来事を描いた作品。爽やかな印象が際立つ佳作だ。
薫は自分とは対照的なヨーコにたちまち魅了される。もしこれがハリウッド映画であれば、薫はヨーコに感化され、たちまち外交的な性格に変身したりするのだろうが、もちろん、この映画ではそうならない。20年後の現在、30歳のOLになった薫はやっぱり地味な性格のままだ。ずいぶん久しぶりに会う弟からも「ガキの頃からぜんぜん変わってないな」とからかわれる。
しかし映画の最後で、薫がヨーコから影響を受けていたものが1つだけあることが明かされる。この幕切れは鮮やかだった。「1つだけ」と言ったが、薫が独りで釣堀で佇んでいるあたりの風情も、ヨーコからの影響を何となく感じさせる。
決してその出逢いで人生が変わったわけではないが、その鮮烈な印象の痕跡はいつまでも残り続ける..これだけ説得力を感じる映画は久しぶりかも。

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# by coolkoro | 2007-06-20 21:41 | 劇場鑑賞
あるスキャンダルの覚え書き "NOTES ON A SCANDAL"
    2007年 06月 10日
【KBCシネマ】

主演2人の名前で(タイトルに「スキャンダル」の文字はあっても)、高尚なイメージを持って観てみたが、何とも下世話な映画だった。
ジュディ・デンチが演じるモンスター老女の迫力も凄いが、一方のケイト・ブランシェットの方も、一見クレバーそうに見えて、実は幼稚な部分も隠せず、他人につけこまれる隙が多い女性を実に自然に演じていて、これも見事。

日常の人間関係で、感情のすれ違いや、相手が自分の期待に応えてくれない時に感じる失望感、苛立ちは誰もが経験することだろう。ジュディ・デンチの老女は異常で、彼女が同僚教師に向ける憎悪は理不尽としか言いようが無いが、彼女にも同情できる部分を見出す人は少なくないと思う。その意味で、彼女を終始異常者として描くのではなく、もともと普通の人間だったのに、屈折した感情の蓄積で、徐々に人格が壊れていく過程を見せた方が、映画はより普遍性を持ったのではないだろうか。

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あるスキャンダルの覚え書き  \"NOTES ON A SCANDAL\"_b0004063_21364510.jpg

# by coolkoro | 2007-06-10 20:21 | 劇場鑑賞
パッチギ! LOVE&PEACE
    2007年 05月 21日
【Tジョイ久留米】

観るべきかどうか、ちょっと躊躇した映画だった。
前作『パッチギ!』にも「在日朝鮮人」の問題が背景として登場するが、基本的には日本人高校生の視点から描かれた青春映画だった、というのが私の理解。しかし続編の主役は在日朝鮮人の家族に置き換えられているらしい。そうなると気になるのが、日ごろの井筒監督の(拉致問題を「日本側の捏造」と言い切るほどの)朝鮮問題に関する偏向した言動の数々..もしかして、観ていて唖然とする反日映画に仕上がっているのではないか?

実際に観てみた。巷の評判は決してよろしくないようだが、私はそう悪くない作品だと思う。実は映画の前に邦画ばかり5~6本の予告編が上映された。これが、どれもこれも観るに耐えない作品ばかり。予告編だけで「酷い」と断ずるのが邪道なのは承知だが、とても作り手が惚れ込んだ企画とは思えないし、世に伝えたいメッセージが込められているとも思えない代物だ。たぶん「今時の客にはこんなのが受けるんだろう」程度のアイデアで作っているんじゃないか。これらと比べれば、良くも悪くも作り手の主義主張がはっきりと伝わってくる今作の方が好ましい、と私は感じるのだ。

もちろん納得できない点も多々ある。
その最たるものは、日本軍による朝鮮人強制連行の場面が「事実」として映像化されていること。映像の力とは恐ろしいもので、「在日は強制連行された朝鮮人の末裔」などとは信じていない私にさえ、このシーンは説得力を感じさせるものがあった。
ストーリーにも無理がある。例えば、新進女優となったヒロイン(中村ゆり)の舞台挨拶シーンでの行動がそうだ。それほどまで感情的に受け入れ難い映画であったのなら、なぜ彼女は嬉々としてオーディションを受けに行ったのか。そして「あんな手段」を弄してまで役を手に入れたのか? 
クライマックスでの(お約束?の)大乱闘シーンも余計だった。好評だった前作とはあまりに毛色が変わってしまったことを危惧して、帳尻あわせに挿入したとしか思えないのだが。

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# by coolkoro | 2007-05-21 22:11 | 劇場鑑賞
檸檬のころ
    2007年 05月 14日
【KBCシネマ】

ポスターでは5人のメインキャストが並んで写っているが、本編で彼らが一堂に会することはない。基本的には2組のカップル+1名のそれぞれのエピソードが平行して描かれるスタイルの映画。個々のエピソードが点描という感じで、一つのな物語へ収斂していかないのが残念だった。
その「+1名」の石田法嗣を思わせぶりに登場させておいて、途中からバッタリと出番が無くなったのは何なんだろう。『カナリア』以来の谷村美月との共演に期待していたんだけどな。

いちばん合点がいかなかったのが、演技経験が浅い榮倉奈々絡みの、しかも一番ありきたりで退屈なエピソードをメインストーリーに据えていることだ。音楽ライター志望の孤高な女子高生を演じる谷村美月のエピソードを中心にした方がよっぽどユニークな作品になったと思うが、それだと作者が意図した「普遍的な青春像」とイメージがズレてしまうという判断だったのだろうか。印象に残るシーンも多々ありながら、全体としては「古臭い青春映画」という感じが拭えない。

しかし最近の青春映画は北関東を舞台にしたものが多い。やはり東京に近い田舎というのが好都合なんだろうか。
あと最近は受験の合否が電話の自動音声応答サービスで確認できるとは..これにはちょっと驚いた。

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檸檬のころ_b0004063_9332078.jpg

# by coolkoro | 2007-05-14 21:42 | 劇場鑑賞
          
   
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