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犯人に告ぐ
    2007年 06月 25日
WOWOW制作の劇場用映画第1弾、『犯人に告ぐ』のプレミア放映を観た。
WOWOWは、これまでに「ドラマW」の枠でなかなか粒ぞろいのオリジナルドラマを制作してきた実績があるので、満を持して世に送り出す劇場用新作には平均以上のクオリティを期待していた。
しかしオンエアを見た感想は、正直言って期待はずれ。
劇場型犯罪を題材にした作品だが、いろんな既存の映画からアイデアを拝借して一本にまとめたような印象で、ストーリーにオリジナリティが感じられないし、何より登場人物たちの造形が類型的で薄っぺらなのだ。これではせっかくの豪華キャストが泣く。例えば、トウがたってきた美人キャスターを演じる片岡礼子も、視聴率欲しさに浅はかな画策を弄するばかりで、演技の見せ場がまったく用意されていない。彼女は数々の女優賞に輝いた『ハッシュ!』以後、まったく役に恵まれていない。本当に残念。

劇場公開前の新作といえば、先日も、NHKのBSハイビジョンで放映された『殯の森』を観た。(カンヌ映画祭で受賞した直後の新作が劇場公開前にオンエアされるとは、どういう事情か知らないが、相当異例なことだ) この作品も、グランプリ受賞というほどの作品とは思えなかったが、撮影はすばらしかったし、痴呆老人と介護ヘルパーだけの2人芝居が延々と続く映画なので、テレビだと辛いが、劇場で観ればだいぶ印象が違うかも?ぐらいのことは感じた。しかし、この『犯人に告ぐ』の場合、ちょっと他人に劇場鑑賞はお勧めできない。
キサラギ
    2007年 06月 22日
【シネリーブル博多駅】

ある自殺したアイドルの1周忌として、ファンサイトのオフ会に集まった男たち..という現代的な意匠で味付けされているが、登場人物たちの独白により二転三転するストーリー展開は、室内劇としてはオーソドックスなものだと思う。世評どおり確かによくできていて、大いに笑わせてもらった。結末もそれほど意表をついたものではなく、別に感動はしなかったが、落としどころとしては悪くない。

映画の最後で「如月ミキ」の姿をはっきりと見せたのは、意見が分かれるところだろう。「遅れてきた清純派」だとか、「彼女の最大の魅力は目」とかの台詞から、「どんなに魅力的な女の子だろう」と客に想像させておいて、その落差で笑わせようという意図はわかる。しかし..あれはやっぱり無かった方が良かったかな。

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しゃべれども しゃべれども
    2007年 06月 22日
【ユナイテッドシネマ キャナルシティ13】

しゃべれども、しゃべれども、なかなか客に噺を聞いてもらえない若手落語家を主人公に、彼のもとに集まった同じく「話し方」に悩む者たちとの交流を通して、人間としても噺家としても成長を遂げていく姿を描いた作品。不器用な人間たちが互いにぶつかり合い、もたつきながらも成長していく..というオーソドックスな筋書きながら、手堅い演出や役者の好演が光るハートウォーミングな作品に仕上がっている。落語界が舞台..というと、それだけで観客を選ぶ映画という気がするが、登場するのがみな現代的なキャラクターだということもあり、作品全体の印象はなかなか新鮮だ。

役者では、1ヶ月のトレーニングでここまでの話芸をマスターした国分太一もさすがだが、無愛想で口下手な美女に扮した香里奈が一番の印象だった。喜怒哀楽をあまり表情に出せない(というか、見た目は常に怒の状態)役柄ながら、シーンに応じて微妙な感情の違いを見事に表現している。反対に世間では絶賛を集めている子役の方はどうも..ああいう芸達者な子役の芝居は苦手だ。あと驚いたのが、国分が密かに憧れる女性に扮した占部房子。名前に憶えがあると思ったら、例のイラクでの邦人人質事件をモデルにした『バッシング』でヒロイン役を演っていた人だ。あれだけ、とことん暗いヒロインというのも珍しかったが、今作ではとても同一人物とは思えない。

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サイドカーに犬
    2007年 06月 20日
【NTT夢天神ホール】 ※試写会

根岸吉太郎監督の前作『雪に願うこと』を世評ほど良いと思わなかった私だったが、この『サイドカーに犬』は予告編でなぜか心引かれるものを感じて、いそいそと試写会に出かけた。
上映前の舞台挨拶では、根岸監督と主演の竹内結子、それに主題曲を唄っているYUIの3人が登壇。YUIはかってこの天神で路上ライブを演っていたそうだが、壇上の彼女は、自分に話が向けられているとき以外、直立不動の姿勢でじっとしているのが可笑しかった。根岸監督は彼女の生真面目そうな風情から、「映画に登場する小学生だった薫の10年後の姿」を連想したそうだ。なるほど、よくわかる。
一方の竹内結子はといえば、映画で演じたヨーコばりのユニークなトークが楽しかった。意外に今回の役は、これまででいちばん素の彼女に近いのかもしれない。

映画は、ある内気な少女、薫が自由奔放で型破りな女性と出逢い、共に過ごした夏休みの出来事を描いた作品。爽やかな印象が際立つ佳作だ。
薫は自分とは対照的なヨーコにたちまち魅了される。もしこれがハリウッド映画であれば、薫はヨーコに感化され、たちまち外交的な性格に変身したりするのだろうが、もちろん、この映画ではそうならない。20年後の現在、30歳のOLになった薫はやっぱり地味な性格のままだ。ずいぶん久しぶりに会う弟からも「ガキの頃からぜんぜん変わってないな」とからかわれる。
しかし映画の最後で、薫がヨーコから影響を受けていたものが1つだけあることが明かされる。この幕切れは鮮やかだった。「1つだけ」と言ったが、薫が独りで釣堀で佇んでいるあたりの風情も、ヨーコからの影響を何となく感じさせる。
決してその出逢いで人生が変わったわけではないが、その鮮烈な印象の痕跡はいつまでも残り続ける..これだけ説得力を感じる映画は久しぶりかも。

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あるスキャンダルの覚え書き "NOTES ON A SCANDAL"
    2007年 06月 10日
【KBCシネマ】

主演2人の名前で(タイトルに「スキャンダル」の文字はあっても)、高尚なイメージを持って観てみたが、何とも下世話な映画だった。
ジュディ・デンチが演じるモンスター老女の迫力も凄いが、一方のケイト・ブランシェットの方も、一見クレバーそうに見えて、実は幼稚な部分も隠せず、他人につけこまれる隙が多い女性を実に自然に演じていて、これも見事。

日常の人間関係で、感情のすれ違いや、相手が自分の期待に応えてくれない時に感じる失望感、苛立ちは誰もが経験することだろう。ジュディ・デンチの老女は異常で、彼女が同僚教師に向ける憎悪は理不尽としか言いようが無いが、彼女にも同情できる部分を見出す人は少なくないと思う。その意味で、彼女を終始異常者として描くのではなく、もともと普通の人間だったのに、屈折した感情の蓄積で、徐々に人格が壊れていく過程を見せた方が、映画はより普遍性を持ったのではないだろうか。

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