マーダーボール "Murderball"
    2006年 11月 25日
【KBCシネマ】
分厚い装甲にカスタマイズされた車いすで相手に激突し、そしてなぎ倒す..そのあまりに激しい戦いぶりから、「マーダーボール」の異名を持つウィルチェア(車いす)・ラグビー。この映画は、因縁のライバルであるアメリカとカナダの代表チームを中心に、それぞれの障害を克服し、ウィルチェア・ラグビーに情熱を燃やす選手たちの友情と確執を映し出したドキュメンタリーである。

アメリカで「ラグビー」が盛んだとは非常に意外だったのだが、映画で実際のゲームを見ると、このウィルチェア・ラグビー、スロー・フォワードもOKだし、ラグビーというよりアメフトやアイスホッケーに近い感じだ。それはともかく、まるで戦車のように改造した車いすを駆使した肉弾戦の迫力はハンパじゃない。あの車いすだと激突の度に、ちょっとした交通事故ぐらいのダメージを受けるんじゃないだろうか。そう思えるほど凄まじい。
そんな超危険なスポーツを四肢マヒの障害者がやるなんて、日本ではちょっと想像できないが、何と日本代表チームもちゃんと存在していて、映画にも一瞬だが登場する。

この映画のユニークな点は、障害者スポーツのイメージを根底から覆すド迫力の競技シーンもさることながら、障害者たちを健常者と同じ「等身大の人間」として捉えているところだ。当然ながら、障害者の中にも善人もいれば悪人もいるはずで、それは健常者と変わらない。この映画の主人公格であるアメリカ代表チームのマーク・ズパンは、ただでさえコワモテのうえ、手足にはタトゥーを入れており、意図的に相手を威嚇する風貌をしている。なにも恐いのは外見だけでなく、友人から「あいつは障害者になる前からワルだった」と証言される始末だ。

映画の中のプレイヤーたちからは、自分が障害者だという負い目など微塵も感じられないので、彼らは肉体だけでなく、精神力の方も特別に強靭なのだと思えてしまうが、そうではなかった。あのズパンでさえ「障害者になってからの2年間はキツかった」と告白する。映画にはプレイヤーではなく、障害を負って間もない少年も登場する。当然、まだ障害者としての状況に順応できていない。そんな彼がズパンの車イスに乗せてもらって、目を輝かせるシーンは感動的だった。「障害者だからって自分で限界を作っちゃダメだ」とはズパンの言葉だが、この瞬間、少年は自分が作っていた限界を乗り越えられる確信を持ったのだろう。その後、彼はウィルチェア・ラグビー用の車いすを購入するために、貯金を始めたという。

マーダーボール@映画生活
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by coolkoro | 2006-11-25 22:16 | 劇場鑑賞