13歳の夏に僕は生まれた "Once You’ re Born"
    2006年 09月 18日
【KBCシネマ】
 北イタリアの地方都市ブレシャ。工場経営者である両親のもと何不自由なく暮らす13歳のサンドロは、父親やその友人と地中海クルージングに繰り出すが、誤って夜の海に転落してしまう。すんでのところで彼を救出してくれたのは、不法移民がひしめく密航船に乗っていたルーマニア人のラドゥとアリーナの兄妹だった。やがて両親のもとに戻ったサンドロは、移民センターに保護された兄妹の救済を訴えるのだが..

 実は4月に東京で開催されたイタリア映画祭の会場で、この作品の監督であるマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ氏と偶然ちょっとした接触があって、その際の彼の態度に好印象を持っていた。映画祭ではスケジュールの都合で予告編しか観られなかったので、この映画が福岡で公開されるのを待望していたのだけど、ずいぶん待たされたなあ。

 なんとも厳しい映画だ。
 何不自由なく裕福に育った少年が、不測の出来事をきっかけに、それまで知らなかった世界と出会い、生きることの厳しさを知る物語である。
 この手の映画でありがちなのが、不幸な人々を救いたいと願う純真な少年と、それに対して無理解な大人たち..という構図だ。その点、この映画は違っている。少年の両親は本気で不幸なルーマニア人兄妹を救済しようと動くのだ。しかし豊かな財力を持った彼らの力をもってしても、結果として兄妹を救うことはできない。それが現実。
 そして映画の終盤、ミラノ郊外のスラム地区で、サンドロがアリーナと再会する場面は衝撃的だ。少年が目の当りにしたのは、この年齢では受け入れがたい、あまりにも残酷な現実だった。

 ラストシーン、サンドロが3ユーロで買ったパニーノを少女に差し出す光景が忘れらない。父親の財力でも救えなかった彼女に、いま彼が与えられるのはこれだけなのだ

 この映画で描かれた不法移民たちのように、社会の底辺で虐げられている人々はあらゆる世界に存在する。善意の人たちが彼らを救おうと努力しても、それが非常に困難であることも、映画で描かれているとおりだろう。しかし、だからといって私たちはそれを放置していいのか?無関心でいいのか?いや、たとえ1人1人は微力であっても、私たちにもできることが何かあるはずだ。ジョン・レノンの「イマジン」ではないが、そうした多くの個人の力が一つに結実したとき、世界は変わるのではないか。このラストシーンには、監督のそんな想いが託されている気がしてならない。

13歳の夏に僕は生まれた@映画生活

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by coolkoro | 2006-09-18 23:00 | 劇場鑑賞
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