トニー滝谷
    2005年 04月 17日
【シネテリエ天神】
b0004063_22512815.jpg現実世界のリアルさとメルヘンが絶妙に融合したと言ったらよいのか、まずは村上春樹の小説世界が破綻なく映像化されています。イッセー尾形と宮沢りえの芝居も立派なものだし、なにより坂本龍一の音楽が印象的。西島秀俊によるナレーションの耳障りの良さも相まって、なかなか心地よい余韻が残る作品でした。

ただし不満もあり。上映時間はわずか1時間20分。簡潔にまとまった作品には違いないのですが、素っ気無いというか、少々物足りない感じは否めません。
主人公のトニーは少年時代からずっと孤独な生活を送ってきた男。「1人でいることが特に寂しいとは思わなかった」というトニーですが、そんな彼も、好きな女性ができて結婚して、初めて「もう一度孤独になったらどうしよう」という恐怖に怯えることになります。結局、彼の恐れは現実のものとなってしまいます。再び孤独になったトニーはこの先の人生をどう生きていくのか..という点に私たち観客の関心は向かうのですが、その部分があまりにも短い。え、これで終わり!?という感じで映画は結末を迎えます。

原作は短編だし、小説ならこれでいいでしょう。短編小説とは物語で語られていない部分を読者の想像力で補完することを前提にしているものだと思いますが、これは短いとはいっても長編映画です。映画なら原作の内容に拘らず、もっと具体的なメッセージを観客に提示して然るべき。まあ、これは私個人の考え方ですが、いずれにせよ、きちんと幕が下りるような結末を観たかったな。

あと学生時代の主人公もイッセー尾形が演じていますが、これは別の若い役者を使うべき。長髪のズラをかぶった彼を見て、私は笑いを禁じえませんでした。彼が舞台で得意としている一人芝居なら、これでいいんですけどね。
by coolkoro | 2005-04-17 22:51 | 劇場鑑賞
<< 海を飛ぶ夢 "Mar...