サイドウェイ "Sideways"
    2005年 03月 07日
【TOHOシネマズ久山】
b0004063_238888.jpgこの映画の主人公マイルズは、人生に行き詰まりを感じて、塞ぎこみがちの毎日を送っている中年男。A.ペイン監督の前作「アバウト・シュミット」でジャック・ニコルソンが演じた主人公もそうでしたが、この主人公が抱えている問題は第三者から見れば大して深刻なものではなく、贅沢な悩みと言ってよいでしょう。彼は永年の小説家志望なのですが、まだ自作を出版する機会は得られない。また2年前に経験した離婚の痛手を未だに引きずっている..しかし彼は失業しているわけでもなく、教師という安定した職業に就いていて、それに今回の映画のように、思い立てばまとまった休暇を取って趣味の旅に出ることだってできる。自分はそんなに休み取れないぞ!何の不満があるの?そう言いたくなるのは私だけではないでしょう...たぶん。
こんなことでウジウジと悩んでいる男を主人公に据えて、観客を楽しませる映画を作ることは、作り手に相当な技量を要求されるものでしょう。今回、ペイン監督はそのきめ細かな日常描写と、ワインをモチーフにしたユニークな語り口で、観客を最後まで飽きさせることなく共感を呼べる作品に仕上げています。

今回の旅の相棒ジャックはどうしようもない女好きで、しかも自己中心的。マイルズは散々に振り回されます。もうこんな奴とは絶交しろよ!と思わず言いたくなりますが、そんなジャックもギリギリのところで、マイルズに対する友人らしい思いやりを垣間見せる瞬間があって、ああ悪い奴じゃないんだ、こんな感じで彼らは学生時代からの腐れ縁を続けてきたんだな..と思わされます。演出といい演技といい、この辺の描写は秀抜。

ジャックに比べると、マイルズの方は分別のある人間です。しかし彼の小説の出版話がダメになったと知らされると、つい自暴自棄になってしまい、とあるワイナリーで醜態を晒してしまいます。映画はこんな2人のダメさ加減を容赦なく描きだしていきますが、決して2人を突き放すのではなく、その視線にはどこか温かみを感じます。彼らのやってることはバカに違いないのだけれど、でもそれって解るよ、男っていくつになっても子どもなんだし..だなんて自身が男である自分は感じてしまいました。ここらあたり、女性の観客の眼にはどう映るのでしょう?興味があるところです。

映画の終盤はマイルズにとって辛い展開になります。彼は打ちひしがれるように家へ戻るのですが、エンディングでは少しばかり救われる出来事が彼を待っていました。これは「アバウト・シュミット」とまったく同じ構成ですが、同じだから芸が無いというのではなく、物語としてあるべき帰結にたどり着いたという感じで、とても好感が持てました。

サイドウェイ@映画生活
by coolkoro | 2005-03-07 23:07 | 劇場鑑賞
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